杉のチカラで「働く」を豊かに
「KOTOMO(コトモ)」は地産地消にこだわった杉材が主材のオフィス家具ブランド。ブランドを立ち上げたワケやどんなことを目指しているのか、ぜひ知っていただけたら嬉しいです。
「コト」を実現するための「モノ」づくり
なぜ「コトモ」を立ち上げたのでしょうか。
プロダクトを通して、「働くことの素晴らしさを表現したい」
そんな想いを持って立ち上げたのが「コトモ」です。これまでさまざまなオフィス空間を見てきた中で、働く人たちが快適に過ごせる環境の大切さを感じてきました。働きやすさが実感できると余計なストレスを感じなくなり、業務効率も上がると期待されます。在宅ワークやリモートワークができる環境整備がされてきた一方で、オフィス回帰に取り組む企業も増えています。企業の働き方が多様化する中で、出勤してくる人たちにとって快適な空間とは何かを考え、オフィス環境も変化させていく必要があると思いました。そこで空間を印象付けるオフィス家具に着目したんです。
オフィス家具の業界は、木製家具を増やそうとする動きはあるものの、依然としてスチール家具が多いのが現状です。そこで木を主体としたオフィス家具をつくれないだろうか、そんなことを思って「コトモ」を立ち上げました。
「コトモ」というブランド名にどのような想いを込めていますか?
モノをつくることにこだわるとプロダクトアウトになりがちですが、「コト」を実現するために「モノ」がある、という思いがあったので、「コト」が先に伝わる表現にしました。
「コトモ」は地産地消をテーマとしたサプライチェーンの構築をすることで、地域の活性化や林業が抱える課題や環境問題の解決の一助となり、人にも環境にもやさしい社会を実現することを目指しています。
地域の杉材を使って、地域の事業者と共に、地域の施設やオフィスで使われる家具をつくる。そんなサイクルを生み出していきたいと思っています。
杉の魅力を、カタチに
「木」が主体のオフィス家具の魅力や価値はどんな点にあると考えていますか?
人がいる場所、住まう場所になじむのが「木」だと思っています。何よりも「あたたみ」がいいんですよね。それは木目のような視覚的に感じるぬくもりだけではありません。木は金属などの人工物とは異なり、調湿効果があって熱伝導率が低いので触れても温度が奪われずあたたかく感じます。さらに、加工をしても呼吸をし続け、二酸化炭素を吸収して蓄積する性質を持っています。その中でも、杉は空気を多く含んでいるので断熱材の役割を果たしてくれますし、「コトモ」をオフィスに取り入れていただくことで、室内環境を快適にしてくれるんです。
もちろん、「コトモ」の導入だけですべての課題が解決できるわけではありませんが、オフィス環境の改善をきっかけに、少しでも社会が抱える課題や環境問題に人々の意識が向く大きな一歩になると思っています。
なぜ、杉材にこだわって作られたのでしょうか?
戦後、災害対策や国産材の資源を確保するために杉やヒノキの拡大造林が進められました。杉材は他の木材と比較しても安価で、柔軟性があって加工しやすく、他にも軽量で持ち運びがしやすい、木目が美しい、香りにリラックス効果があるなど、さまざまなメリットがあります。しかし、刈り時を迎え、杉は余ってしまっている状況にあり活用方法が検討されてきました。
シミや傷がつきやすい性質があり、一般的に弱いとされる杉材は、住宅建築においては柱や梁などの構造部材として多く活用されてきました。また、オフィス家具については、これまで広葉樹を主材とするか、広葉樹とスチールを組み合わせた家具は多く存在しますが、針葉樹である杉材を構造部材として使用した家具はありません。それは柔軟性が高いゆえに強度に課題があり、家具には不向きとされてきたからです。
私たちはこの点に着目し、地域に余っている杉材を活かす地産地消の取り組みとして家具づくりをしようと考えました。

また、住宅建築などで使われるジョイント金具をヒントに、「コトモ」オリジナルのジョイント機構を開発したことで、強度を保ちながら杉材をメインにした家具への使用を実現しています。
地域の産業や人に寄り添ったオフィス空間づくり
「コトモ」の展望をお聞かせください。
オフィス家具業界は、すでにさまざまな企業が商品を展開しており、商品のバリエーションも豊富で競争の激しい業界です。私たちは杉材、工場、施設を結びつけるコーディネートを通して、働く環境づくりの一つのきっかけとして「コトモ」をつくっています。
リモートワークや在宅勤務が当たり前にできるようになった中で、オフィス空間のあり方も変化が求められていると感じています。働く喜びや価値を見出せる心地よい空間ならば、仕事に張り合いが出てくるはずです。そのうちに、杉材の魅力に触れたことで働く価値を実感でき、杉材の必要性が高まっていったらいいなと思いますね。
また、杉材の特性やオフィス条件と向き合いながら、プロダクトを作るだけでなく、自然素材にこだわったオフィス空間をデザインすることにも挑戦していきたいと考えています。